モーツァルトのヴァイオリン協奏曲 投稿者:
いど 投稿日:2007/06/10(Sun) 14:40 No.453 | |
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先週と今週の土曜日にNHKハイビジョンでムターのモーツァルト:ヴァイオリン協奏曲の全曲が放送されていましたね.これは年頭に発売になったDVDの内容そのままで,購入したものにとっては,ちょっと放送が早すぎるんじゃないのと言いたくもなりますが.
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集(アンネ・ゾフィー・ムター) Mozart: Violin Concertos (Anne-Sophie Mutter, Camerata Salzburg)
ムターはモーツァルトのヴァイオリン協奏曲全曲と協奏交響曲(ヴィオラ:バシュメット)を2005年の7月にロンドン・フィルと録音しているのですが,このDVDはその年の12月にカメラータ・ザルツブルクで再度,収録されたものです.同じ年に2回も全曲録音するとは,並々ならぬ意気込みですが,彼女自身13歳のとき,カラヤン指揮のヴァイオリン協奏曲第3番でデビューしてから30周年,更にモーツァルト生誕250年も重なったためなのでしょうか.しかし残念ながら協奏交響曲は収録されていません.
両者とも弾き振りで,カデンツァも同じもの(1番:ジット,2番:フランチェスカッティ,3番:フランコ,4番:ヨアヒム,5番:ヨアヒム,オシップ・シュニルリン新版)を使用しています.演奏会では,一番有名な5番が取り上げられることが多く,ついで4番,まれに3番,1,2番はまずお目にかかる機会は無いでしょう.ちなみにヴァイオリンのレッスンでは難易度から通常,まず3番,そして5番か4番の順でやることが多く,3番のカデンツァはフランコが一番易しいのでレッスンでよく使用されると思いますが,このカデンツァの演奏映像が見られるという点も楽しめる(打ちのめされる?)のではないでしょうか. 演奏内容についてはコメントしませんが,演奏スタイルの好みは別として技術的には完璧な演奏を披露してくれます.
さてこのDVD,レーベルはグラモフォンで映像はユニテルですが,この組み合わせでモーツァルトのヴァイオリン協奏曲といえば,やはりLD時代からおなじみのクレーメルのものを忘れるわけにはいけません.
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集(ギドン・クレーメル) Mozart: Violin Concertos and Sinfonia Concertante (Gidon Kremer, Kim Kashkashian, Winer Philharmoniker, Nikolaus Harnoncourt)
指揮:アーノンクール,演奏:ウィーンフィルで1983年から1987年の収録.しかも会場がウィーン楽友協会にコンツェルトハウス(4番と5番)とソロ以外の映像も十分堪能できます.こちらは,協奏交響曲もきちんと収録されておりヴィオラはカシュカシアンです.カデンツァはピアニストにしてモーツァルト研究家のロバート・レビンのもの(一部クレーメルの自作)を使用しているあたりがクレーメルらしいですね.クレーメルはムターと違い,良く動いてフレームアウトするので,カメラが追いかけるのが大変そうです.またムターは楽譜なしで弾いていますが,クレーメルのほうは楽譜を見ており,しかも出だしのトゥッティのところも弾いてしまうのです.これもクレーメルならではの面白さです.
またコンサートマスターが1番と協奏交響曲はヒンク,2番は入団直後のホーネック(4,5番の1裏も),そして3番から5番は名コンサートマスターにして1992年に若くして登山で滑落死したヘッツェルが登場します.4番3楽章でのクレーメルとヘッツェルのソロも見所です.
おまけに3番のカデンツァですが,とんでもないカデンツァを演奏する人がいます.そのヴァイオリニストの名はジル・アパップ(Gilles Apap).本人公認で映像がYouTubeに掲載されていますので,見たことの無い方は是非ご覧ください.ここまでやれば本物です.
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