昭和31年に客貨分離された士幌線。以後廃止になるまでの30年間旅客輸送は気動車(DC)によって行われました。車両の運用受け持ちは池田機関区によるもので、起点駅帯広にある帯広運転区は乗務員の運用だけで、同区の車両運用は貨物列車牽引のSLやDLだけでした。 池田機関区の気動車による定期運用車両においてはキハ05が昭和31年から36年頃にかけて、キハ12が昭和34年頃から54年にかけて、また、キハ22に関しても昭和34年頃から廃止までの間運用についておりました。廃止前には釧路機関区の受け持ちに変わり(池田機関区の車両配置が廃止)キハ40の運用も、されるようになったものです。 ここで、注目すべき車両はキハ12型気動車です。そもそも10系気動車は、昭和28年に当時の非電化路線における蒸機牽引列車の低頻度、都市近郊の路線におけるフリークエントサービスの拡大による輸送サービスの向上が課題とされて登場した気動車であり、10系気動車750両の中で、北海道形式としてキハ11の100番台を2重窓化するなどして昭和31年に登場したのがキハ12型気動車22両です。新製配置では旭川、稚内、深川などと道北の路線を中心に配置されたが、当時すでに10系気動車の重量と変わらずに一回り大きな車体を実現した軽量気動車キハ20系が開発製造され始め、耐寒仕様のキハ22が道内新製配置にともない、キハ12が22両中16両池田機関区に集中配置されたのです。約76%に及ぶ集中配置は形式消滅の昭和55年まで続き、バス窓の狭幅気動車が走る数少ない路線として、士幌、広尾、池北線での運用となりました。言い換えればキハ12は士幌線の顔的な存在になっていたのです。キハ12が顔なら、主も存在しました。それはキハ22です。特にキハ22の81、134、135、249、250の5両は新製配置が池田機関区であり、士幌、広尾線の廃止まで一生をこの地で過ごした気動車です。 キハ22134は廃線時の余剰車両として廃車になり、広尾線の広尾駅に保存されたものの、管理不足からか状態が悪化して惜しくも解体処分されてしまいました。81も余剰で廃車。残りの135、249、250はJR北海道に継承されましたが、老朽化と標津線廃止、池北線の転換などの影響もあり、釧路機関区に移動後廃車となってしまいました。 客貨分離されてから廃止までの30年間で定期旅客運送の運用気動車は4形式でしたが、運用の関係でキハ27、56が増結、臨時急行で入線。また団臨でキハ59キハ29(アルファコンチネンタルエクスプレス)が入線しています。 キハ05とキハ12の形式消滅が早く、残念ながら保存車両として現存しませんが、2007年度開館予定の鉄道博物館(さいたま市大宮区)にキハ04とキハ11が保存展示されることとなり、外観上では同形の車両につき往時を偲ぶことが可能と思われます。 また、キハ05もキハ12も1957年4月1日をもって形式変更となり、それ以前は,キハ05はキハ41400,キハ12はキハ48200という形式でした。 この形式変更にともなうエピソードが士幌線絡みで一つあります。昭和31年の7月に上士幌駅構内で入れ替え作業中の丸太を搭載したチキが暴走し帯広起点33.2キロ地点(北平和駅2.2キロ手前)でキハ41408の普通旅客列車と衝突、死者3名重軽症者38名を出す惨事となりました。このキハ41408は翌年の4月からキハ059と称号改称されることが決まっていましたが、廃車となり結局キハ059は存在しない欠番となったわけです。新製ではなく称号改称ゆえの欠番発生に士幌線が絡んでいたとはちょっとしたエピソードですね。 |
<釧路工場で保存を前提に留置されていたキハ051>
残念ながら保存されずに解体.台車のみ保存.
<キハ12>
バス窓と呼ばれる固定窓が10系の特徴
<キハ22134とキハ12>
生涯を十勝の路線で活躍.その大きさの違いがわかります.
<士幌線末期に登場したキハ40>
これは釧路機関区の配属で運用されていた
<士幌線の気動車を担当していた池田機関区>
通常は帯広運転区で駐泊しての運用であった.
【士幌線年度別運用気動車形式】
昭和
|
31 | ~ | 35 | ~ | 38 | ~ | 40 | ~ | 55 | ~ | 57 | ~ | 62 |
キハ05 | ― | ― | ― | → | |||||||||
キハ12 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | → | ||||||
キハ22 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | → | ||
キハ40 | ― | ― | → |
なお,車両写真は残念ながら士幌線での撮影ではありません。車両紹介として参考画像です。
記号番号
|
落成年月日 | 製造メーカー |
配置
|
廃止年月日 | ||
1957.4.1以前 | 1957.4.1以後 | 新製 | 最終 | |||
キハ48200 | キハ121 | 1956.10.15 | 新潟鉄工所 | 深川 | 北見 | 1976.3.22 |
キハ48201 | キハ122 | 1956.10.15 | 新潟鉄工所 | 深川 | 深川 | 1978.2.25 |
キハ48202 | キハ123 | 1956.12.28 | 新潟鉄工所 | 深川 | 北見 | 1978.2.25 |
キハ48203 | キハ124 | 1956.12.28 | 新潟鉄工所 | 深川 | 池田 | 1979.11.22 |
キハ48204 | キハ125 | 1956.12.28 | 新潟鉄工所 | 旭川 | 池田 | 1980.2.29 |
キハ48205 | キハ126 | 1956.12.28 | 新潟鉄工所 | 旭川 | 池田 | 1980.11.4 |
キハ48206 | キハ127 | 1957. 1. 8 | 新潟鉄工所 | 旭川 | 池田 | 1979.11.22 |
キハ48207 | キハ128 | 1957. 1. 8 | 新潟鉄工所 | 旭川 | 池田 | 1979.10.9 |
キハ48208 | キハ129 | 1957. 1.14 | 新潟鉄工所 | 旭川 | 池田 | 1980.2.5 |
キハ48209 | キハ1210 | 1957. 1.14 | 新潟鉄工所 | 旭川 | 池田 | 1980.2.21 |
キハ48210 | キハ1211 | 1957. 1.18 | 新潟鉄工所 | 旭川 | 池田 | 1979.10.9 |
キハ48211 | キハ1212 | 1957. 1.18 | 新潟鉄工所 | 旭川 | 池田 | 1980.2.21 |
キハ48212 | キハ1213 | 1957. 1.23 | 新潟鉄工所 | 旭川 | 池田 | 1979.11.22 |
キハ48213 | キハ1214 | 1957. 1.23 | 新潟鉄工所 | 旭川 | 苗穂 | 1977.11.4 |
キハ48214 | キハ1215 | 1957. 1.29 | 新潟鉄工所 | 旭川 | 池田 | 1980.6.2 |
キハ48215 | キハ1216 | 1957. 1.29 | 新潟鉄工所 | 旭川 | 池田 | 1979.11.22 |
キハ48216 | キハ1217 | 1957. 2. 4 | 新潟鉄工所 | 稚内 | 池田 | 1980.6.2 |
キハ48217 | キハ1218 | 1957. 2. 4 | 新潟鉄工所 | 稚内 | 池田 | 1979.12.25 |
キハ48218 | キハ1219 | 1957. 2. 9 | 新潟鉄工所 | 稚内 | 池田 | 1979.10.9 |
キハ48219 | キハ1220 | 1957. 2. 9 | 新潟鉄工所 | 稚内 | 池田 | 1979.10.9 |
キハ48220 | キハ1221 | 1957. 2. 14 | 新潟鉄工所 | 稚内 | 深川 | 1977.11.4 |
キハ48221 | キハ1222 | 1957. 2. 14 | 新潟鉄工所 | 稚内 | 苗穂 | 1977.11.4 |
キハ12
|
キハ22
|
||
定員
|
座席数
|
74
|
71
|
立席数
|
14
|
10
|
|
自重(t)
|
31.8-32.0
|
32.0-32.5
|
|
換算両数
|
積
|
3.5
|
3.5
|
空
|
3.0
|
3.0
|
|
主要寸法(mm)
|
最大長
|
20000
|
20000
|
最大幅
|
2758 ※1
|
2928
|
|
最大高
|
3710/3500 ※2
|
3925
|
|
車体外部の長
|
19503
|
19503
|
|
車体外部の幅
|
2603
|
2803
|
|
台車中心距離
|
13700
|
13800
|
|
車体関係
|
床面高さ(mm)
|
1250
|
|
階段高さ(mm)
|
970
|
||
運転室
|
両
|
両
|
|
便所
|
有
|
有
|
|
出入り口数(片面)
|
2
|
2
|
|
座席配置
|
横-縦
|
||
暖房装置
|
温水
|
||
台車
|
形式
|
DT19/TR49
|
DT22A/TR51A
|
軸距(mm)
|
2000
|
2100
|
|
マクラバネ装置
|
コイルバネ
|
||
連結器および緩衝装置
|
密着型小型自連
|
密着型小型自連
|
|
ブレーキ機関
|
種別
|
DA1A
|
DA1A
|
空気圧縮機
|
C600
|
||
ブレーキシリンダ
|
254×250SO×2
|
||
ブレーキ率(%)
|
90
|
||
形式
|
DMH17C
|
DMH17B
|
|
標準出力/同回転数
(PS/rpm) |
180/1500
|
170/1500
|
|
動力伝達方式
|
液体式
|
液体式
|
|
充電発電機方式/容量
|
直流24V/1KW×2
|
直流24V/1KW×2
|
|
照明方式
|
白熱灯40W×16
|
||
蓄電池
|
種別
|
TRE16
|
TRE16
|
容量(5時間率)
|
24V/320Ah
|
24V/320Ah
|
|
付属装置
|
冷却水容量(L)
|
352
|
504
|
潤滑油容量(L)
|
52
|
52
|
|
変速機油容量(L)
|
TC2の場合43
|
TC2の場合43
|
|
DF115の場合54
|
DF115の場合54
|
||
送風機容量(L)
(m3/rpm/rln) |
280/1470
|
280/1470
|
|
燃料タンク容量
|
400
|
400
|
|
最高速度(Km/h)
|
95
|
95
|
|
製造初年度
|
昭和31
|
昭和33
|
|
製造所
|
新潟鉄工所
|
帝国,富士,
日本,新潟 |
|
注)
|
※1
最大幅は雨樋部または手すり部を示す ※2 通風器上/屋根上 冷却水、潤滑油、変速機油容量は配管、放熱器を含む |
1~170までの緒元 200以降は設計変更あり |
2005/2/1更新
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